自筆証書遺言の作成方法と注意点
2024/04/07
目次
今回は、自筆証書遺言の作成方法と注意点について、行政書士が解説します。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者本人が遺言書の全文、遺言書の作成日付、及び、遺言者氏名を自書し、押印して作成する遺言書の方式のことです。公正証書遺言に比べて費用を安く抑えることができたり、いつでも修正できる点などの理由でよく利用される遺言書になります。また、遺言書の存在やその内容を他人に知られたくない場合などに、この方式が用いられます。
従来は財産目録も含めて全文を自書しなければ自筆証書遺言として有効ではありませんでした。しかし、平成31年1月13日に施行の法改正により、財産目録は、財産目録が記載されたすべてのページに署名押印することを要件として、ワープロやパソコンによる作成、預金通帳のコピーなどの資料や不動産(土地・建物)の登記事項証明書の添付が認められるようになりました。
用意するもの
自筆証書遺言の作成にあたり、用意するものがいくつかあります。
筆記用具
まず、筆記用具ですが、鉛筆やシャープペンなどは改ざんのおそれもあるため、避けましょう。同様の理由からフリクションなどの消せるボールペンもお勧めできません。
また、万年筆は水性インクのため、万が一、紙が濡れてしまったときに判読できなくなる可能性があります。黒色の油性ボールペンなど長期間の保存に向いているものを選びましょう。
遺言用紙
続いて遺言用紙です。A4サイズで、記載内容の判読に支障をきたすような地紋、彩色などのない用紙を使用しましょう。自筆証書遺言については法務局の遺言書保管制度を利用する前提のため、法務局で推奨されている上記のような用紙で遺言書を作成することをおすすめします。
印鑑
自筆証書遺言は署名して押印することが要件となっています。そのため印鑑を用意しましょう。認印でも可能ですが、確かに本人が作成したものだと証明するためにも、実印を使用するのが望ましいです。シャチハタ印などは避けましょう。
自筆証書遺言のルール
自筆証書遺言には必ず守らなければならないルールがあります。
自筆すること
自筆証書遺言という名称のとおり、「遺言書」の題目、本文、日付、氏名などすべてを自分自身が手書きで書かなければなりません。録音や録画、親族などによる代筆はいずれも遺言書として無効になってしまいます。
※平成31年1月13日以降に作成する遺言書は、財産目録をパソコンで作成したり、預金通帳のコピーや登記簿謄本を添付して全ページに署名押印することで、有効なものとして成立することになりました。
日付を正確に書くこと
作成した日付を正確に記載しなければなりません。
令和6年4月1日、2024年4月1日といったように和暦・西暦は問いません。相続開始後に、内容が矛盾する遺言書が複数枚見つかったときは、日付が新しいものが有効となります。
※矛盾しない部分については古い日付のものも有効になる。
署名すること
遺言書に署名する氏名は、戸籍上の本名に限らず、雅号や芸名・屋号であっても、遺言者が確定できれば有効なものとなります。しかし、実際には戸籍上の氏名を書いた方が紛らわしくなくて良いでしょう。また、氏名の前に住所を書くと本人確認がより確実なものとなります。
押印すること
署名のあとに押印をします。前述のとおり、実印を用いることで遺言の信憑性が増します。
作成方法
自筆証書遺言の具体的な作成方法について解説していきます。
相続人を整理する
まず初めに、自分の相続人が誰なのかを整理する必要があります。
この相続人の整理については、一般的な相続手続きのように、戸籍謄本等を取得して法定相続人を特定する必要まではありません。あくまで、自分を取り巻く人間関係・親族関係を整理して、誰に財産を遺すか想像する程度でかまいません。
相続財産を調べる
次に、相続財産を調査しましょう。この相続財産の調査については、できるだけ正確に行いましょう。具体的には預金通帳や有価証券の証書、保険証書の整理や登記簿謄本や固定資産評価証明を取得して不動産を特定しましょう。
財産が特定できたら、財産目録を作成します。預金については支店名や口座番号、不動産については地番や地目、地積などを正確に記載しましょう。この財産目録の作成は、実際に遺言を執行する際にとても重要であるため、書き損じや間違いなどには気を付け、何度も確認することをおすすめします。
遺言書を下書きする
遺言書は書き間違えてしまった場合、訂正方法が難しいので、いきなり清書せずに、なるべくノートや便せんに鉛筆で下書きをしてから清書するようにしましょう。
遺言書を清書する
下書きができたら、黒の油性ボールペンで丁寧に清書しましょう。法務局の遺言書保管制度を利用するためには、様式が定められているため必ず事前に確認することをおすすめします。例えば、左側余白20ミリメートル以上、下側余白は10ミリメートル以上など細かく決まっています。
遺言書を保管する
従来は自宅の金庫やタンスなどに保管されることが多かったですが、法改正により法務局に預けられるようになりました。法務局の保管制度を利用することで、遺言書の紛失や改ざんのおそれを回避できます。さらに保管の申請手数料も1通3,900円と安価です。そして遺言書が法務局で保管していることは、エンディングノートなどに記しておくのがよいでしょう。
注意点
自筆証書遺言の作成にはいくつか注意点もあるため、確認しておきましょう。
訂正方法
遺言書を書き間違えてしまったときは、決まったやり方で訂正しなければ無効になってしまいます。以下遺言書の訂正手順です。
- 間違えた部分は二重線で消して、近くに正しい文字を記載する。
- 訂正した部分に、署名の隣に押した印鑑と同じもので押印する。
- 遺言書の余白に、どの部分をどのように訂正したのかを付記して、その部分に署名する。
遺言書の訂正は手順が複雑なため、複数個所を書き直したい場合は、遺言書を破棄して新しく書き直すことをおすすめします。
遺留分
遺言書を作成する際、誰にどれだけの財産を相続させるかは自由です。しかし、第三者に全財産を相続させる、といったような法定相続人を完全に無視した遺言書を作成すると、後々トラブルに発展してしまいます。それが「遺留分」です。「遺留分」とは、相続人には最低限遺産を相続できる権利のことです。
この遺留分は相続人の組み合わせによって変化しますが、例えば第三者に全財産を遺贈した場合、配偶者と子どもの遺留分は、全財産の半分となります。この場合、配偶者と子どもは、遺産を受け取った第三者に対し、遺留分侵害額請求をする可能性があります。
遺留分を侵害した遺言書を作成すること自体は無効ではありませんが、侵害された相続人が不満を抱いて、紛争に発展するケースは珍しくないため、十分な配慮が必要です。
付言事項
遺言書には付言事項といって、遺族などへのメッセージを書くこともできます。生前お世話になった人や遺族への感謝の意を伝えるには有効です。しかし、中には付言事項で恨みつらみを書いてしまう人もいます。この場合も、遺族が憤慨して余計な紛争状態を招くおそれがあるため、付言事項にはそのような内容を書かないようにしましょう。
遺言執行
せっかく遺言書を作成しても、その遺言の内容を実現することができなければ、絵にかいた餅で終わってしまいます。そうならないためにも、遺言執行者を指定しましょう。遺言執行者は遺言の内容を実現させるため、銀行や法務局での手続きをする者のことです。遺言執行者には相続人の代表者を指定してもよいですが、相続手続きは繁雑なため相続人の負担も増えてしまいます。そのため、行政書士などの専門家に就任してもらうことをおすすめします。
まとめ
自筆証書遺言は、手軽に作成できる反面、全文を自書しなければならないなど、遺言者の負担も大きい遺言方式です。また、遺言書の条項については、専門的な知識を必要とするため、慣れない人にとっては時間と手間がかかってしまいます。せっかく作成しても、条項や記載文言を間違えたりすると無効な遺言書となってしまうこともあります。
この点に関しては、自筆証書遺言の文面や原案を専門家に依頼して作ってもらうことで、これらの問題を解消できます。一度、行政書士などの専門家に相談してみてはいかかでしょうか。
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