国外の建物を相続させる場合の遺言書の書き方
2024/06/13
目次
国外財産とは
「国外財産」とは、国外にある財産のことを指します。どの財産が国外にあるかを判断する際には、財産の種類ごとに次のように決められています。
- 不動産や動産:その物が実際に存在する場所
- 預金、貯金、積金:口座を開設した銀行や金融機関の場所
- 有価証券:証券を管理している口座がある金融機関の場所
このように、財産がどこにあるかを確認して、国外財産かどうかを判断します。
記載注意点
在外資産の相続に関しては、日本の法律に基づいて作成した遺言書 が、当該資産の存する国や地域等においても有効なものとして扱われるかについて、当該国の遺言の方式に関する準拠法を検討する必要があります。
当該国が日本も批准している「遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約」の批准国であれば、民法上適法な方式で作成された遺言書は当該国においても有効となります。もっとも、実際は、当該国の金融機関や法務局等の担当者が日本の遺言書の取扱いに不慣れな場合が多く、遺言書の翻訳文のみならず、日本の相続制度や当該遺言書の適法性等について弁護士名での意見書の提出等を要求されることもあります。したがって、手続を円滑に進めるためにも、在外資産が存在する(実際に相続手続を行う)国等の法律が定める方式に則った遺言書をそれぞれ作成しておくことが望ましいといえます。
また、米国や英国をはじめとする英米法圏の国や地域においては、相続人の確定、遺言書の有効性の確認、債権者への公告及び相続人への財産分配等を、原則として裁判所の監督下で行うプロベイト(Probate)と呼ばれる相続手続が採用されています。プロベイトによる場合は、現地の方式に則った遺言書を作成していたとしても、財産の分配を受けるまでに相当の期間を要しますので、プロベイトを避ける方法を含め、在外資産の相続については現地の弁護士等の専門家にも相談することが重要です。
記載例
第1条 遺言者は、遺言者が所有する下記の建物を、遺言者の妻A(平成〇〇年 〇〇月〇〇日生)に相続させる。
(建物の表示 省略)
国外にある財産の邦貨換算
外貨建てによる財産及び国外にある財産の邦貨換算は、原則として、納税義務者の取引金融機関が公表する課税時期における最終の為替相場によります。この為替相場は、邦貨換算を行う場合の外国為替の売買相場のうち、いわゆる対顧客直物電信買相場(TTB)又はこれに準ずる相場をいいます。