行政書士堀井タヰガ事務所

配偶者居住権と相続の法律を解説!必知の権利と手続き

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不動産相続で重要な配偶者居住権について行政書士が解説します

不動産相続で重要な配偶者居住権について行政書士が解説します

2024/04/25

配偶者居住権と相続について、その法律を解説することで必知の権利と手続きを紹介します。日本では、配偶者居住権があることで、配偶者が亡くなった際に住居を失うことを避けることができます。また、相続に関しても、法定相続人や遺産分割協議書など、知っておくべき制度や手続きがあります。この記事を通じて、配偶者居住権と相続に関する基本知識を身につけ、生活の不安を解消しましょう。

目次

    配偶者居住権とは

    平成30年の民法(相続法)改正により、新たに被相続人の配偶者に有利な制度ができました。この配偶者居住権により、被相続人の配偶者が、相続開始の時に被相続人所有の耐え物に居住していた場合に、遺産分割、遺贈または死因贈与により、その建物の全部について使用及び収益をする権利を取得することになります。

    相続が発生し、妻と長男が相続人として法定相続分のとおりに相続した場合、妻と長男の相続分はそれぞれ2分の1ずつとなります。相続財産は、自宅(2,000万円)と預貯金(3,000万円)とします。妻としては長年住み慣れた自宅を離れたくはないと思うのが通常のケースです。このとき、妻と長男で遺産分割協議をし、妻が自宅を相続するとした場合、自宅の評価額2,000万円を相続したことになり、妻は預貯金については500万円しか取得できずに今後の生活が心配になります。逆に、今後の生活資金として金銭を多く取得することを選択すると、自宅は長男に譲ることになり、生活の拠点を失うことになりかねません。

    そこで、妻が自宅での居住を継続しながら預貯金などのその他の財産も取得できるように新たに新設されたのが配偶者居住権です。これにより、自宅は長男が相続するけれども、妻は配偶者居住権の設定を受けて、引き続き自宅に無償で居住し続きることができ、かつ、預貯金についても多く取得することができます。この場合、長男は配偶者居住権の負担のついた自宅を相続することになります。

    配偶者居住権の設定要件

    配偶者居住権の設定を受けるには、満たさなければならない要件が法律で定められています。

    民法1028条1項のとおり、配偶者居住権は、原則として配偶者が相続開始の時に被相続人所有の建物に居住していたことが必要です。たとえば、婚姻別居中などの理由で相続開始時点で妻が自宅に居住していなかった場合には、配偶者居住権の設定を受けることができません。

    しかし、妻が病気やケガで一時的に入院しているなどの場合おいて、配偶者の家財道具などがその自宅にあり、退院後に自宅に戻る予定であるときは、配偶者は相続開始時点で自宅に居住していたものとして考え、配偶者居住権の設定を受けることができます。

    配偶者居住権の存続期間

    配偶者居住権の存続期間は、原則として配偶者が生きている間です。しかし、設定時に期間を定めることもできます。

    民法1030条
    配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。

    期間を限定してしまうと、後から延長や更新ができないので、この期間設定は配偶者にとってはメリッほぼメリットはありません。

    遺言による配偶者居住権

    配偶者居住権は、被相続人が死亡した後の遺産分割協議によって設定できるほか、遺言書であらかじめ遺しておくこともできます。同様に死因贈与によって設定する方法もあります。

    遺言においては、遺言者が配偶者に自宅と預貯金を遺す内容とすると、他の相続人遺留分を侵害してしまう恐れがあります。しかし、法律で認められた配偶者居住権を遺言書によって遺すことにより、遺留分の問題を解決することができます。

    遺言によって配偶者居住権を遺す場合、注意しなければならないのは、記載文言です。一般的に、相続人に対して遺産を遺す場合の記載文言は「相続させる」(特定財産承継遺言)ですが、配偶者居住権の場合は「遺贈する」(特定遺贈)と記載します。些細な違いですが、特定財産承継遺言と特定遺贈では遺言執行の場面で取れる選択が異なります。

    特定財産承継遺言の場合、仮に妻が配偶者居住権の取得を希望しない場合、配偶者居住権のみを拒絶することができず、相続放棄をしてすべての遺産についての権利義務を失う他ありません。この場合は配偶者にとってかえって不利益となります。

    一方で、特定遺贈の場合は、希望しない遺産については放棄することができるので、配偶者居住権のみを放棄することができます。

    様々な家庭の事情があるため、相続人である配偶者が配偶者居住権を希望しないということは十分い考えられます。

    配偶者居住権設定の登記

    それでは配偶者居住権はどのように設定するのでしょうか。遺言や遺産分割協議によって配偶者居住権付の不動産を取得した人には、配偶者に対して「配偶者居住権の設定の登記」を備えさせる義務が生じます。

    配偶者居住権設定登記をしていない場合、不動産の所有者が第三者にその不動産を譲渡してしまうと、配偶者は第三者に対して配偶者居住権があることを対抗できなくなってしまいます。このため、配偶者居住権の設定登記は相続発生後に遅滞なく行う必要があります。

    配偶者居住権は譲渡不可

    配偶者居住権は残された配偶者の生活安定を目的とした制度です。そのため、配偶者居住権を他人に譲渡することは認められていません。また、あくまで不動産は所有者のものであるため、居住建物の所有者の承諾を得なければ、第三者に居住建物を使用させたり、収益をさせることもできません。

    裏を返せば、所有者の承諾を得ることで、居住建物を第三者に使用させたり、賃貸収益を得ることも可能です。これにより配偶者は居住建物を第三者に賃貸して、別に生活の拠点を移すこともできます。

    まとめ

    今回は配偶者居住権について解説しました。配偶者居住権の設定は遺言や死因贈与などがない場合、相続人全員の遺産分割協議によって定めなければならず、協議がまとまらないと配偶者は長期間不安定な状態となってしまいます。遺言書などで配偶者居住権の定めをしなかった場合でも、相続開始時に配偶者が当該建物に居住していた場合には利用できる配偶者短期居住権という制度もありますが、この制度には期間が定められているため、限定的な権利となっています。残される配偶者のためにも、配偶者居住権を遺言書などで定めておくことをおすすめします。

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