私道を相続させる場合の遺言書の書き方
2024/06/06
私道とは
個人や法人が所有し管理している道を「私道」といいます。これに対し、国や自治体が所有し管理する道は「公道」です。
私道には、不特定多数の者の通行の用に供する通り抜け道路と、そうでないものがあります。後者は、袋小路のようにもっぱら特定の者の通行の用に供するいわゆる行き止まり道路のことです。
記載注意点
遺言書に、宅地については特定の者に相続させる旨記載されている ものの、宅地に隣接する私道については記載がない場合、私道は、宅 地の受遺者に当然に相続されるのかが問題となります。 宅地が主物、宅地に隣接する私道が従物とすれば、従物は主物の処分に従うので、私道も宅地の受遺者に相続されると解することもできます。
しかし、私道は、私権の行使に一定の制限があるものの、所有権を移転し、又は抵当権を設定し、若しくは移転することが可能ですので、宅地とは独立した遺産として、相続の対象となります。したがって、遺言書に、宅地については特定の者に相続させる旨記載されているも のの、宅地に隣接する私道について記載されていない場合には、宅地の受遺者が当然 に私道も相続するということにはなりません。この場合、遺言書に記載がない私道については、相続人全員を当事者とする遺産分 割協議を行う必要が生じますので、私道を取得したい宅地の受遺者は、他の相続人に 対し代償金を支払わざるを得ない場合が生じることとなります。そのため、宅地を特定の相続人に相続させる場合には、後に争いを生じさせないた めにも、当該宅地に隣接する道路が私道に当たるのかを調査し、私道についても漏れ なく遺言書に記載するよう注意する必要があります。
記載例
第1条 遺言者は、遺言者が所有する下記の土地を、遺言者の妻A(昭和〇〇年 〇〇月〇〇日生)に相続させる。
記
所 在 相模原市〇〇町〇〇丁目
地 番 〇〇番〇〇
地 目 公衆用道路
地 積 〇〇.〇〇平方メートル
私道の評価
私道には、①公共の用に供するもの(通抜け道路のように不特定多数の者の通行の用に供されている場合)、②専ら特定の者の通行の用に供するもの(袋小路のような場合)、があります。
私道のうち、①に該当するものは、その私道の価額は評価しないことになっています。②に該当する私道の価額は、その宅地が私道でないものとして路線価方式又は倍率方式によって評価した価額の30%相当額で評価されます。
この場合、倍率地域にある私道の固定資産評価額が私道であることを考慮して付されている場合は、その宅地が私道でないものとして固定資産評価額を評定し、その金額に倍率を乗じて評価した価額の30%相当額で評価されます。