行政書士と司法書士の違いは?両方の業務内容を比較
2024/03/30
行政書士と司法書士は、法務の専門家として知られていますが、それぞれ担当する業務内容は異なります。本稿では、両者の違いを解説し、業務内容を比較してみましょう。
目次
行政書士と司法書士の違いとは?
行政書士と司法書士は、どちらも法務の専門家であり、法律に関する業務を行う資格を持っています。しかし、2つの資格には明確な違いがあります。
司法書士は登記または供託に関する手続きの代理が業務の中心です。
行政書士は、行政官庁と個人の間に起因する手続き的な法律に焦点を当てており、主に官公署に提出する許認可等の書類の作成やその手続の代理を行います。一方、司法書士は、司法書士試験に合格して資格を取得し、主に法務局や裁判所でのの登記または供託に関する手続きの代理が業務の中心となっています。
行政書士は主に行政手続き、契約書、事業許可を取り扱い、司法書士は不動産の所有権登記、140万円以下の訴訟手続きなどを専門としています。
行政書士は、多様化した社会に対応し、許認可申請や相続手続きなど、さまざまな分野で手続きを行うことができます。司法書士は簡易裁判や登記申請を通して、国民の権利や財産を守るための業務を行うことができます。
このような違いから、それぞれ専門性があり、業務内容によって適した専門家に相談することが重要です。
行政書士の業務内容
行政書士は、行政法や条例に関する文書作成や手続きに特化した専門家です。主に、官公署に提出する許認可等の申請書類の作成や申請などの手続代理、遺言書や遺産分割協議書、契約書等の権利義務、事実証明に関する書類の作成、行政不服申立てや手続代理等を行います。
具体的には、建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可、運送業許可、古物商許可、在留資格申請、遺言書作成、相続手続き、定款認証など、様々な業務を行います。
行政書士は、顧客から相談内容を聞き、必要書類や手続きを調べ、適切なアドバイスや書類作成サービスを提供します。また、行政庁や役所とのやりとりも行い、手続きを円滑に進めるためのサポートも行います。
行政書士は、専門知識を持ったプロフェッショナルでありながら、弁護士よりも費用が安く、敷居が低いため、ビジネスパーソンや個人の顧客からの依頼も多い職業です。
司法書士の業務内容
司法書士は、登記に関する専門家です。主に、地方法務局提出する書類の作成や手続き代理、裁判所または検察庁に提出する書類の作成や手続き代理を行います。
主な業務内容としては、不動産登記手続き、法人登記手続き、供託の審査請求手続の代理、筆界特定手続書類の作成などが挙げられます。また、簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟、民事調停、仲裁事件、裁判外和解等の代理及びこれらに関するにおいて相談を行います。
司法書士は登記と供託のプロフェッショナルです。登記法や供託法に関する深い知識を有する専門家でありながら、上記のような広範な業務も担当します。
両方の業務において共通すること
行政書士と司法書士は、共通する業務もあります。例えば、相続手続きでは、遺言書や遺産分割協議書の作成などは、行政書士であっても司法書士であっても行うことができます。同じ相続手続きでも、不動産相続の登記については司法書士が行い、農地の相続による届け出や農地転用は行政書士が行います。
また、会社設立の際には、行政書士が定款認証を行い、司法書士が登記を行うといったように、連携して業務に当たることが多いです。
上記のように、相続手続きや法人設立の場面では、共通する業務がありますが、多くの場合は、専門性を活かした連携によりお客様の悩みを解決します。
行政書士も司法書士もそれぞれ法律に精通しており、各分野の専門的な知識を有するプロフェッショナルです。両士業に共通するのは、法的な知識や書式の正確さ、お客様のニーズを汲み取った丁寧な対応が求められている点です。
行政書士業務も企業側のビジネスに関わる場合もあるため、お客様とのコミュニケーション能力も求められます。また、お客様からの信頼獲得も重要な業務の一つであり、お客様目線でのサービス提供が求められます。
行政書士業務においても、お客様にとって必要不可欠な存在であるため、徹底した信頼性とプロフェッショナルな対応が求められています。
遺言・相続業務
業務内容 | 行政書士 | 司法書士 |
---|---|---|
遺言書の作成 | 〇 | 〇 |
遺産分割協議書の作成 | 〇 | 〇 |
戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明などの収集 | 〇 | 〇 |
相続人調査、確定、相続関係説明図の作成 | 〇 | 〇 |
相続財産調査、確定、財産目録の作成 | 〇 | 〇 |
相続登記 | ✕ | 〇 |
相続放棄の手続き | ✕ | 〇 |
農地相続の届出、農地転用 | 〇 | ✕ |
許認可を得た事業を相続した旨の届出 | 〇 | ✕ |
会社設立業務
業務内容 | 行政書士 | 司法書士 |
---|---|---|
定款の作成、認証手続き | 〇 | 〇 |
会社設立登記 | ✕ | 〇 |
許認可業務
業務内容 | 行政書士 | 司法書士 |
---|---|---|
建設業許可申請 | 〇 | ✕ |
産業廃棄物収集運搬業許可申請 | 〇 | ✕ |
在留資格申請 | 〇 | ✕ |
供託・訴訟業務
業務内容 | 行政書士 | 司法書士 |
---|---|---|
供託手続き | ✕ | 〇 |
140万円以下の訴訟手続き | ✕ | 〇 |
事務所選びの基準は?
行政書士と司法書士のどちらに相談すべきかは、お客様の状況によって異なります。相続手続きの場合、不動産をたくさん所有しているのであれば、司法書士に相談してみてもいいでしょう。
一方、被相続人が事業や会社をやっている場合や農地を相続した場合などは、行政書士に相談することをおすすめします。
お客様自身で、どちらの専門家に相談すべきか判断が難しい場合は、無料相談会などを実施している事務所などに連絡してみるもの良いでしょう。司法書士事務所や行政書士事務所は相談料が発生することが一般的ですが、中には最初の30分は無料で相談できる事務所もあります。
また、なるべく自宅や住まいから近い事務所を選ぶことで、依頼した際の来所負担も軽減されます。
なによりも、なるべく信頼できる事務所に相談・依頼しましょう。
料金も十分な判断材料です。行政書士業務も司法書士業務も報酬額の設定は自由なため、様々な料金設定の事務所があり、迷うところですが、一定の相場というのはあります。料金で判断する場合は、この相場から大きく外れない事務所を選びましょう。
さらにその事務所独自の考え方というのが、あります。これを相談で見抜くことは非常に難しいですが、例えば在留資格申請において、不法就労や不法入国のリスクがありながら、なんでもかんでも申請してしまう事務所もあれば、依頼者といえど、不法入国は許さないという考えの事務所もあります。
当然のこととして、不法就労や不法入国は違法なので、発覚すれば逮捕されてしまいます。
以上のことを踏まえて、重要なのは自分自身の状況と考えを持って、相談先を選択をすることです。