エンディングノートと遺言の違い、そしてそれぞれのメリットについて解説!
2024/03/26
人生には始まりも終わりもあります。
その際、残された家族のためにエンディングノートや遺言を残しておくことが必要です。
しかし、エンディングノートと遺言書は似ていますが異なるものです。
本記事では、エンディングノートと遺言書の違いや、それぞれのメリットについて解説します。家族のためにも、ぜひ知っておきたいポイントです。
目次
エンディングノートとは
エンディングノートは、自分の人生の週末に残すノートのことです。
万が一に備えて、家族や友人に伝えておきたいことや自分の希望などを書き留めておけます。また、自己の財産などの基本情報や人生のエピソードをまとめたものです。
主に高齢者の方が作成されることが多く、生前に自分が何を残していきたいのかを家族や周囲の人に伝えることができます。
また、急な事態に備えて、遺族が遺産相続手続きを円滑に進めるための有益な情報にもなります。
エンディングノートの作成には決まった書き方や要件などはないため、基本的には自分で自由に記述しても問題ありません。しかし、相続手続きや遺言執行などへの影響もあることから、場合によっては行政書士がエンディングノートの記載情報についてアドバイスをすることもあります。
相続手続きがスムーズに進むことで、遺族の負担を減らすことができます。エンディングノートは、生前に自分の財産状況や基本情報など整理し、遺族に残したいことを伝える重要な手段であるといえます。
遺言書とは
遺言書とは、遺産を残した人(被相続人)が死亡した後、残された財産の分配方法や埋葬方法などを明確にする法的な文書のことです。
基本的に遺言書がある場合は、それに基づいて相続人が財産を分配することになり、相続手続きも遺言書を使って進めていくことになります。
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などいくつかの種類があります。
自筆証書遺言とは、被相続人自身が手書きで遺言書を作成するもので、公正証書遺言とは、公証役場で証人を立てた上で作成したものです。秘密証書遺言とは、遺言書を秘密に保管するために、封を施された遺言書の封筒の中に、遺言書が入っていることを公正証書の手続きで証明する方法です。
遺言書は、エンディングノートとは違い、法律で形式や文言、記載内容が決まっています。そのため、自分で作成して文言などを間違えてしまうと、その一部分について無効になるリスクもあります。
遺言書作成は専門知識が必要になるため、行政書士に相談することをお勧めします。
エンディングノートのメリット
エンディングノートは遺言書のように決められた事柄だけに縛られることなく、自由に自分の意思や希望を書き留められることがメリットです。
また、形式や記載内容に制限がないため、より多くの情報を残すことができます。
遺言書にも付言事項といって遺族への思いを記載できる欄がありますが、膨大な分量を書くことはお勧めしません。例えば公正証書遺言の場合は、記載分量によりページが増えるごとに、料金も上がります。自筆証書遺言の場合は、全文を直筆で書かなければいけないため、分量が増えればその分、遺言者の負担も大きくなります。
そのような付随的な内容はエンディングノートに記載し、遺言書には必要最低限の内容を記載することをおすすめします。
また、エンディングノートには自分の資産状況などを整理して記載するため、現在の経済状況を把握できます。
人生の終末期をどのように過ごすのかを考え、周到な準備するのに有用です。
さらに、資産を明確にすることは遺言書作成や相続手続き上でも影響がある重要なことです。
エンディングノートを作成することで、相続手続きの手順などについても記しておけば、遺族が迷わずに手続きを進めることができ、ストレスを軽減することができます。
また、遺物の処分や遺産分割などについて、予め情報を整理しておけば、遺族や家族が迷うことなく手続きを進めることができます。
遺言書のメリット
遺言書の作成はエンディングノートとは異なるメリットがあります。
まず、遺言書を残すことで自分の財産や遺産が自分の望むように分配されるようになります。
また、有効な遺言書は相続手続き全般に使用できるため、相続手続きがスムーズに進むことが期待できます。
遺言書が存在すれば、相続人の間で贈与や分割に関する意見の食い違いが少なくなり、相続人は遺言者の意思を尊重しようとし、遺族間トラブルの回避も期待できます。
さらに、遺言書は法的な効力を持つため、自分の望まない人物に遺産が流れることを未然に防ぐことができます。
遺言書は、誰でも作成することができます。しかし、遺言書を作成する際には行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。行政書士は、遺言書の作成方法や効力について詳しく、遺言者の希望をヒアリングして遺言書に盛り込む条項を的確にアドバイスしてくれます。
遺言書を作成し、家族や相続人の負担を軽減するとともに、自分の最後の意思を残された人たちに伝えましょう。
エンディングノートの記載事項
エンディングノートには主に以下の事項を記載しておきましょう。
- 基本情報
自分に関する基本的な情報を記載します。これらを書いておくだけでも家族の負担は大きく減らすことが出来ます。
例:生年月日、本籍地、血液型、家族、家系図、学歴、職歴、資格、マイナンバー、運転免許証番号、健康保険証番号、自分史、性格、信念、人脈、友人関係、趣味・特技、好きな食べ物など - 財産情報
年金証書や保険証書、介護保険証や健康保険証、通帳・印鑑、貴重品などの保管場所を記載しておきましょう。
例:預貯金、金庫などに保管している現金、不動産、有価証券、貴金属、骨董品など - デジタル情報
デジタル情報はIDやパスワードがわからないと削除や変更が出来ずに永久に残ってしまいます。
例:SNSのID、パスワード、メールアドレス、退会手続き、操作方法など - 人間関係
家族への感謝の気持ちなどを残しておきましょう。また、友人の連絡先を記しておくことで亡くなったことを知らせることができます。
例:家族や友人へのメッセージ、連絡先、形見分けリストなど - ペット情報
ひとり暮らしの場合は、残されたペットを引き取り、きちんと世話をしてくれる人を決めておきましょう。ペットも家族ですから、自分の死後も責任があります。
例:ペットの引き取り先、世話をしてくれる人、ペットの性格、好き嫌い、病歴など - 葬儀情報
自分がどのような葬儀を希望するのかやお墓のこと、宗教についても記載しておきましょう。
例:宗教、宗派、葬儀の方法(密葬・家族葬など)、納骨の方法・場所、墓、遺影に使う写真など - 相続情報
遺言書を残しているなら保管場所を記しておきましょう。せっかく遺言書を作っても見つけてもらわなければ意味がありません。
例:遺言書の存在、戸籍、遺言執行者の連絡先など
遺言書の記載事項
遺言書には主に以下の事項を記載します。
- 遺産の分け方
遺産の分け方を自由に決めることができます。ただし、遺留分には注意が必要です。 - 相続分の指定
法定相続分以外の相続分の指定が可能です。 - 負担付遺贈
財産を渡す代わりに、何らかの条件を付けることができます。 - 遺産分割の禁止
5年を超えない範囲で、遺産分割を禁止することができます。その間、遺産は相続人の共有になります。 - 遺言執行者の指定
遺言書の内容を確実に執行するために、行政書士などを遺言執行者に指定することができます。 - 生命保険の受取人の指定(指定の変更)
保険法の変更により、保険契約者が遺言で保険金の受取人を変更できるようになりました。 - 祭祀主宰者
先祖代々の墓地や仏壇を引き継ぎ、遺骨の管理などをする人を指定することができます。 - 子供の認知
認知すると、婚姻関係にない男女間で生まれた子どもと、父親の間にほうりつじょうの親子関係を発生させることができます。認知により、子どもは相続人として、財産を相続する権利を得ます。 - 相続人の廃除(廃除の取消)
素行の悪い相続人を、家庭裁判所で相続人から廃除する旨の審判を受けて、相続人でなくならせることができます。 - 未成年後見人の指定
自分の死後、未成年の子どもの世話や財産管理をする人を指定できます。
遺言書とエンディングノートの使い分け
遺言書もエンディングノートも、遺産分割をはじめとする相続や葬儀について、遺された家族に対し意思を伝えるという点では共通しています。
そこで、どちらの書類を作成するかについて悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
結論としてはどちらも作成しておくことが望ましいです。前述した相違点やそれぞれのメリットの通り、遺言書とエンディングノートは役割が異なります。
遺言書は、自分が所有する財産について望む相続分割を定める書類です。相続人が誰であるか、どのように相続財産を分割するのかといった内容を明確にすることができます。法的な効力のある遺言書を作成することで、相続手続きの簡略化やトラブル回避につながることが期待できます。
一方、エンディングノートは、自分の死後に家族に伝えたい情報や基本的な個人情報をまとめた書類です。生前にどんな治療に同意するのか、どのような葬儀を希望するのかといったことや、債券債務などの情報も記載することができます。自分が亡くなった後に家族が悩むことを最小限にするためにも、エンディングノートの作成もまた重要です。
どちらの書類も自分が亡くなった際に、家族の負担を減らすために必要なものです。そして何より自分の意思を家族に伝えるための手段です。
法的な効力を有する遺言書と、多くの情報や伝えたいメッセージを記載できるエンディングノートは、相続においてどちらも重要な書類であり、うまく使い分けることでより良い相続を実現できます。
行政書士に相談して、自分に適した形での作成方法を考えてみましょう。