公正証書遺言と自筆証書遺言は結局どっちがいいの?
2024/10/17
目次
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、その名のとおり、遺言書の全文・日付・氏名を自書して作成する遺言書のことです。紙とペンさえあればすぐにでも作成できるため、作成までの時間がかからないという点や、作成費用がほとんどかからないというメリットがあります。
公正証書遺言とは
公正証書遺言は、遺言書を公正証書にしたものです。遺言者が遺言内容を口授し、公証人が公正証書にすることによって作成されます。証人を2人要する点や公証役場において厳格な手続きのもとで作成される点から、自筆証書遺言と比較して遺言書の内容の信ぴょう性が担保されています。遺言書としての質が高い分、費用や時間もかかります。
その人のおかれた状況によって異なる
自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを作成すべきかは、その人のおかれた状況によって異なります。相続人の人数やどのような財産があるのか、また、親族との関係性などにも左右されます。
以下、自筆証書遺言がおすすめな人と公正証書遺言がおすすめな人に分けて解説します。
自筆証書遺言がおすすめな人
自筆証書遺言がおすすめな人は、相続人が1人しかいない人です。相続人が1人しかいない場合、基本的に相続人間で争いになることはありません(そもそも争う相手がいない)。
この場合においては、相続争いを考える必要がないため、手軽で作成費用もあまりかからない自筆証書遺言が良いでしょう。
もちろん、相続人調査の結果、隠し子がいるなどのレアケースは除きます。
相続発生後は、自筆証書遺言を使用して金融機関での相続手続き(この場合、正確には遺言執行手続き)を行うことになりますが、相続人が複数いる場合において自筆証書遺言による相続手続きは認められないケースがあります。これはそれぞれの金融機関で定めている社内規定などに沿って相続手続き(遺言執行)を進めなければならないためです。
つまり、せっかく自筆証書遺言を作成しても、その金融機関で自筆証書遺言での相続手続き(遺言執行)を行うことはできず、肝心の手続き面において遺言の空振りとなってしまうのです。
公正証書遺言がおすすめな人
一方で公正証書遺言がおすすめな人は、下記のような人です。
- 相続人が複数人いる
- 家族と疎遠
- 遺産のうち現金(預貯金)が少ない
- 相続人に配偶者がいる
- 遺言者が高齢
上記のような方は、公正証書遺言がおすすめです。
例えば相続人が複数人いる場合などは、遺言書を作成しても、その遺言書の内容に納得しない相続人が出てくる可能性があります。特に、親子や、兄弟姉妹同士で長期間疎遠になっている場合などは注意です。相続人に配偶者がいる場合、配偶者は相続権がありませんが、現実は関与する(口出しや意見する)ことが少なくありません。
また、相続財産のうち、現金預貯金が少なく、不動産がある場合は特に相続争いに発展しやすくなります。→なぜそうなるかについてはこちらをご覧ください。
遺言者が高齢な場合、自筆証書遺言の要件である全文の自書(手書き)は非常に負担が大きく作成が困難なため、必然的に公正証書遺言を選択することになります。
基本的には公正証書遺言(力を入れて書く、根拠明確に、わかりやすく)
上記の内容を踏まえたうえで、基本的には公正証書遺言をおすすめします。
公正証書遺言を選択する最大の理由は、遺言者が遺言書を作成したという事実を公証人において確かな記録として残ること、さらに作成時に2名の証人が立ち会い、遺言の内容に対して署名押印をもって証明していることにあります。
もちろん公正証書遺言を作成したからといって、その遺言の内容どおりに確実に執行されるわけではありません。例えば、遺留分(法律で規定されている、相続人が取得すべき最低限の相続分)を侵害する遺言書が作成された場合などは、遺留分を争って裁判に発展することもあるためです。しかし、そのような場合でも、公正証書遺言においては、遺言者は確かに遺言書を作成し、その内容が確かに遺言者の意思であることが証明されているのです。この点、自筆証書遺言の場合は、その遺言書が本当に遺言者によって作成されたものなのか、内容は正確なのか、というようにどうしても疑念がぬぐい切れません。
例えば、相続人が3人いる場合において、そのうちの一人が金融機関に自筆証書遺言を持参し、「これは被相続人が残した遺言書です。私にすべての財産を相続させると書いてあります。このとおりに相続手続きをお願いします。」と言っても、ほとんどの金融機関は「他のすべての相続人の方の承諾を取ってください。」と跳ね返されてしまいます。これは金融機関としては当然で、もしもその遺言書が偽造されたものであれば大問題になってしまいます。少しでもそのような疑念がある状況で、金融機関が手続きを進めることはありません。
一方で持参した遺言書が公正証書遺言の場合はどうでしょうか。前述したとおり、公正証書遺言は、公証人と証人2名の立ち合いのもと作成され、遺言者が遺言をしたこと及び遺言者の意思が公正証書という形で証明されています。この場合において、金融機関としては公正証書遺言の内容どおりに相続手続き(遺言執行)を行わなければなりません。当然、金融機関のみならず、相続財産に不動産が含まれるならば法務局においても公正証書遺言の内容に沿って手続きを行います。これは保険や年金についても同様です。
以上の理由により、遺言執行までを考えた場合は公正証書遺言の作成が原則となります。
まとめ
今回は自筆証書遺言と公正証書遺言の選び方について解説しました。当事務所では原則として公正証書遺言をおすすめしていますが、お客様の状況によっては自筆証書遺言の方が良い場合もあります。どちらの遺言書を作成しようか悩んでいる方や具体的な相談をしたい方は、お気軽にお問合せください。
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